SHIN'S ESSAYS(エッセー集)
2002年5月8日(水)
NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(6)
■ NHKの新番組
NHKの番組「さくら」には日米の異文化現象がたくさん。長年海外に住むと日 米間に横たわる不可思議な違いを発見します。そんな話題を番組の中から拾ってお話しします。
「家庭訪問」
さくらが寝坊をします。
このシーンとは直接関係はありませんが、日本に住み はじめてまもない外国人が寝坊しやすい原因が日本の家屋の建築構造にあるの を御存じですか?
実は日本のたいがいの家についている雨戸のせいなんです。夜になって雨戸 をしめますと、朝の明りが窓から入らないので、真っ暗でしょう。だから、 体がまだ夜だと思ってしまうのです。ぼくもひさしぶりに日本の家に泊まっ てこれが原因でずいぶん遅く起きたことがあり、まったく恥をかいてしまい ました。 まだ、6時前かなと思っていると何と9時過ぎだったのです。ですから、外 国の人を家にとめる時は雨戸があるので目覚まし時計を必ず準備するように してあげる必要があります。
家と言えば、寮にさくらと桂木先生が住んでいました。ここは寮だから日本の社会は認めていますが、もし、1軒家やアパートに住んだらどう思われるでしょうね?
アメリカに住みはじめて間もないころ、日本人の学友を訪れました。ドアベ ルを押して出てきたのはアメリカ人の女の子。(あれ?彼にはこんな彼女いた っけ?)と驚いていると、「いえ、ただ単なるルームメイトですよ」と学友に 言われて面喰らったことがあります。それ以来、男女の学生が何人かで家をシェアしているのをよく見て慣れましたが日本なら何かと変に思われる現象 かも知れません。とにかく、1軒家を数人で安く借りる知恵だったのです。 そんな状態で男と女の問題があったということはあまり聞きません。入居する前に、最初に借りたいと言い出した人がシェアする人を吟味するからかも知れません。非常に賢いというか倹約家というか、そんな人は自分が借りた 家を数人に割高で貸して、もうけた分で自分の部屋代を浮かすという人がいます。まあ、ビジネスと割り切っているのでしょう。それで、文句を言う人 もいません。入居者たちは納得して入っているのでしょうから。
さくらが家探しに不動産屋にいきます。そこで、「外国人だとトラブルがあるこ とが多いので貸したくないケースがある」と渋られるシーンがありました。こう いう問題は日本の方が多いらしいですね。とにかく外国人というか自分の肌色と 違う人がいるのが当たり前のアメリカですから、見た目で「外国人には…」という話は聞いたことがありません。 ただ、「ペットお断り」、「禁煙」という理由で入居を断わることはよくあります。
家庭訪問について話しましょう。さくらが目を輝かせていたように、アメリ カには家庭訪問というシステムがありません。もちろん、生徒が巻き込まれる大事件が起きた時などはあるかもしれませんが。でも、日本の教師の家庭 訪問システムをアメリカは学んだ方が良いですね。一般的に親がPTAの会 合に来ない、成績に無関心という割合は日本より多いので、公立の教師たち は大変苦労します。日本と違って、高校まで義務教育なので無料なのです。 ただし、公立高校の質が極端に低下したため、教育熱心な親たちは年間70 万円から100万円ほど払って私立に通わせます。ボーディングスクールと 言われる全寮制ならもっと高いのは当然です。
今、世界中でITを機軸に教育改革が進んでいます。特にアメリカは真剣です。なぜなら、いろんなことで世界のトップを進んでいると自負しているのに、高校生たちの学力レベルは先進国では最下位 にいるからです。そこで、 クリントン前大統領から始まって、現ブッシュ大統領はアメリカ教育史以来 の大金を投じて教育改革を推進しています。
どんな改革かと簡単に言いますと、子どもたちの学力が伸びないのは先生の教え方が悪いからだ、だから、教師の再教育をし、テストを先生に受けさせ るというものが一つ。もう一つは、子どもたちに標準テストを施して、刺激 をしながら、先生がしっかり教えているかどうかを監視するのです。
アメリカの先生たちの給料が安いことも先生がやる気のなかった理由です。 しかし、米政府は「学校全体の成績が上がればボーナスを上げましょう」と 約束したので、それなりに効果 が上がってきてはいます。が、成績を上げる ことばかりに先生たちの神経が集中したからでしょうか、なんと先生が子供 にテストの答えをわざと教えるという信じられないような現象も起きて問題 になっています。 こんな話はつぎからつぎに出てくるようで、アメリカの先生も弱い人間であ ることを暴露しました。
さて、番組の話に戻りますが、訪問先で生徒のお母さんが桂木先生にお見合 い写真を出しますね。さくらは「プライバシーの侵害」と驚いていましたが、 「良いわね、そうやって世話する人がいて」という反応の方がぼくの近所に は多かったのです。 今、アメリカ人もなかなかいい人に巡り会えないので、インターネットのチ ャットやそういったミーティングで彼氏彼女を見つけようと思っている人は 沢山います。変に見た目だけで決めるより、長年電子メールしあったほうが お互いに人格が分かるという考え方もあります。
実際、ぼくの住む街には60 歳代で結婚したカップルが8年ほど前うまれて、話題になりました。ぼくの親 しくしている友人の息子さんは電子メールで知り合った女の子と婚約してハッ ピーになっています。これからますます、世界中で「電子メール見合い」が増 えることでしょう。 ただ、本当に電子メールで簡単に自分の住所や電話番号は知らせないようにし ないと、悪い連中がいてそれを利用しようとしますから充分に注意して下さい。 電子メール先進国のアメリカでは、男の子さえ誘い出されて行方不明という事 件が発生していますので。
今日の最後に、日米の「道路問題」についてお話ししたいと思います。まず、 日本に来て一番最初に感じるのは、道が曲がりくねっていて、狭いこと。もう 一つ付け加えれば、住所表示がはっきりしないので、知らない町で誰かの家を 探すときは大変なこと、でしょうか。道が曲がって、狭いのは国土の広さと地 理的、歴史的理由で当然なので、仕方がありませんが、住居表示はまったくむ ちゃくちゃと言わざるを得ません。
アメリカを訪問された方は気づかれたと思いますが、道路がアルファベット順 になっていたり、あるいはABCそのものを道の名前にしていることがあります。 ちなみに、アメリカのハイウェーに番号がついていますが、その付け方をご存じですか?南北に走るハイウェーは奇数で、東西に走るのは偶数なのです。 ですから、もし道に迷っても、この事実を知っていれば少なくとも自分が進ん でいる方角が分かるので、便利ですね。こんなところにもアメリカの合理性が 見られて面白いのではないでしょうか。
NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(6)