SHIN'S ESSAYS(エッセー集)

2002年5月7日(火)

NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(5)

■ NHKの新番組 
NHKの番組「さくら」には日米の異文化現象がたくさん。長年海外に住むと日 米間に横たわる不可思議な違いを発見します。そんな話題を番組の中から拾ってお話しします。

「ジャパニングリッシュ」

まず今日ははじめに「ボーイフレンド」の日米の取り方の違いについてお話 しします。

日本では「ボーイフレンド」という言葉には二つの使い分けがありますよね。 つまり、ただ単に男の子の友達という場合と恋人という使い分けです。しか し、あちらでの「ボーイフレンド」は明確な「恋人」という意味しかありま せんので、気をつけて使わないと大きな誤解を生じさせることになります。

留学生の日本人女性がそれを知らずにちょっとしたアメリカ人の知り合いを 「ボーイフレンド」と他の人に紹介したため、アメリカ人君は「お、自分の ことをそう思っていたのか!」と調子に乗ってしまったという話です。実は、 これですめばいいのですが、もしその男性の部屋にのこのこついていったら、 これは「ベッドイン」OKという意味にとられても当然ですから、大変な問 題に発展することがあるのです。 日本女性はその辺が非常に甘く、レイプされたと裁判所に訴えてもこのよう なケースは負けるかもしれません。本当に十分に注意が必要です。

母校の恥 を言いたくありませんが、オレゴン大学でも過去に日本人女性ばかりをねら った事件がありました。それも問題を起こしたのは教授だと言うのです。ぼ くはその人がだれかはついに知らずじまいでしたが、内情に詳しい人が「お 宅のお嬢さんに、教授だから大丈夫と家について行かないようにアドバイス しておいたほうが良いですよ」と言われてびっくりしたことからこの話を知 りました。

そんな教授はすぐに辞めさせればいいのでしょうが、ことはそう単純ではあ りません。裁判、教授会などいろいろ面倒な手続きもありますが、それ以上に いったん「tenure」(テニューア:一種の終身雇用制度)の教授になったら殺人 犯にでもならなければ辞めさせられない規則があるらしいのです。結局その教授は周りのプレッシャーに負けてひっそり辞職したそうですが、こんなことを 書いている内になんだか今の日本のある国会議員とダブってしまいました。

教授の話はこれくらいにしておいて、逆のケースです。アメリカ人のお宅に ホームステイした日本人男子が、その家のお嬢さんのフランクな付き合い方 や笑顔を「自分を好いているんだ」と勘違いして大失恋したという話を聞い たことがあります。ぼくが住む所はとにかくアメリカ人でさえびっくりする ほどフレンドリーな街なので、店員でもウェイトレスでもとろけるような笑 顔を見せてくれます。外国からの若者なら勘違いするのは無理もないことか もしれません。

さて、この日本人君です。彼女にダイヤモンドつきの指輪などつぎつぎプレ ゼント。しかし、お嬢さんは彼を「ボーイフレンド」ではなく、ただ自分の 家にホームステイしている日本人としか考えていなかったので、当然彼女は 一人で遊びに行きました。ところが深夜遅く帰ると起きて待っていて、「どこ にいっていたんだ。誰と遊んでいたんだ」と彼女に厳しくつめよったそうな のです。彼女の家庭では「もう二度と日本人のホームステイは入れない」と 立腹。最終的に日本人君は失恋してしょんぼり帰国しました。せっかくアメ リカに留学したのです。ちょっとした異文化コミュニケーションの理解不足で、楽しくなるはずの思い出や留学をいやな記憶にしたくないものですね。

さて、ヒロインのさくらはいよいよ自分のクラスをスタートしました。会話 の授業の中に「サムライ劇」を入れていました。ぼくは日本語を教える公立 小学校でコンピュータを半年間教えたことがあります。ここでは、午前中全 部日本語で授業をして、午後からは算数、社会などは英語を使います。 子どもたちが「先生、先生、これどうやるの?」と日本語でまるで生粋の日 本人の小学生のように話しかけてくるのは本当にかわいらしく、楽しく、でも奇異な感じがします。一度も日本に行ったことがない小学生たちばかりな のですから。

この小学校では日本人の先生が日本文化の紹介として日本舞踊を教えていました。男子生徒は和服や刀(ヘーイ、これがサムライだよと言わんばかりの 服装に見えたものです)、烏帽子などを身につけ黒田節にあわせておどります。 そんな学芸会をみていると、まるで自分の小学校時代にタイムスリップしたような錯覚に陥りましたが、アメリカの親たちには大変好評なようでした

みんなまだ日本のイメージをとらえるときは女性は和服姿でしとやか。そん なアメリカの親たちの期待を裏切りたくないということからなのでしょうか、 日本語を教えるある先生はかたくなに今でもその教え方を貫かれています。 日本から見学に来られる教育委員会の人たちなどはこの時代錯誤的なパフォーマンスに目を白黒されてはいますが…。

さくらたちのたまり場で、外国人女性が「さくらは日本人の顔をしているの にアメリカ人とは変な感じね」というようなことを言っていました。これも 日系人にとって大変不便な話のようです。 院生時代に日本語の助手をしていたころ、一クラス24名近くいる生徒の半 数近くが日系ハワイ人でした。大学生とは思えない素直さと勉強意欲があっ て毎日大変楽しく教えていました。日系ハワイ人の生徒たちは一見すると日 本人の顔をしていますが、血が混じっていない純粋な日本人なのにすぐに彼 らが日系人だと判断できるのですね。たぶん、英語の発声の違いや笑顔、ジ ェスチャーなどで使う顔の筋肉の部分が日本語と違うからなのでしょうか、 どこかちがいます。しかし、その人たちが来日すると、普通の日本人にはな かなか区別 ができないらしく、ちょっと間違った日本語をつかったりすると、 「この子、変な子」とぶきみがられるとある日系人が話してくれました。 もし、みなさんの近所にそんな感じの人がいたら傷ついた日系人かもしれな いので、仲良くして下さい。

そうそう、英語を教えるためにやってきている日系人は顔が日本人なので、 ある中学校では「白人」の外国人が欲しいといったそうですが、まだまだ白 人崇拝的な部分が残る日本。はやくこの偏見をなくさなければいけませんね。

海外に長く住むと日本語が話せなくなることがよくあります。日本語を聞いて言われていることは理解できるのですが、言いたい言葉が口から出なくなるのです。逆に、ぼくはドミニカ共和国から帰ってきた時は、スペイン語で 寝言を言い、スペイン語で考えていましたが、数年もするとスペイン語と日本語が完全に入れ替わっていました。そして、高校をでるころには、スペイ ン語を聞いて分かるのに音声として出てこないという現象に陥り、大変苦労をしたことがあります。これは一種の失語症とも言えるでしょう。

みなさんにもありませんか?頭の中には言いたい絵があるのに、言葉として 出てこないっていうことが。そんな状態がずっと続くのです。これはつらいですよ。ぼくはスペイン語を忘れては行けないと思い、神戸市立外国語大学 に入学しました。今では英語よりも語彙数が少ないスペイン語ですが、いま だにこの言語の方がしっくりします。やはり「習うより慣れよ」「三つ子の魂 100まで」でしょうか。

最後に、英語と外国語のチャンポン語の話をしましょう。アメリカで育った 日系1世はジャパニングリッシュ(Japanenglish)を話します。これは日本 語と英語のチャンポン語と思って下さい。英語をしゃべっているのに、急にその中に日本語が出てきます。それもなんとなく意味不明なもので、日本人には実際何を意味しているのかわからないことがあります。

例えば、「ヒバ チ」と聞くと何を連想しますか?たぶん、冬にでてくる「火鉢」ですよね。 ところがハワイでは「バーベキュー」のことを指すのだそうです。ちなみに バーベキューのことを英語でBQと省略します。こんなふうに、アメリカに いる外国人はそれぞれの母国語と英語のミックスした言語を使います。

ラテ ン系が使う英語はスパニングリッシュ(Spanenglish)と言われています。 あちらのラテン系のテレビを見ていると、そのSpanenglishを出演者が使 っているのを聞いて、一人面 白がって見ることがあります。 10数年前にはなかった「カラオケ」「シイタケ」「エダマメ」など地方都市 の住民でも知るようになりました。フランス語を会話にはさむと「cool」で知 的と思うアメリカ人はいるようですね。人間って同じなんですよ、考えるこ とは。

日本人がカタカナばかり使う、と眉をひそめる人もいますが、まあ、フラン スは別として、アメリカでも日本ほどではないにしてもこのように外来語を 取り込みながら常に新しい英語に変化しています。


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