SHIN'S ESSAYS(エッセー集)

2002年 5月3

NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(3)

■ NHKの新番組 
NHKの番組「さくら」には日米の異文化現象がたくさん。長年海外に住むと日 米間に横たわる不可思議な違いを発見します。そんな話題を番組の中から拾ってお話しします。

「郷に入っては郷に従え」

 主人公さくらが英語の主任教師・沢田に代ってPTA役員の前でさくら流の授業を披露するシーンがありました。

 英語授業法にはいろいろありますが、さくらが行った方法は「ロールプレイング」という手法で語学学習にはとても効果 があります。
楽しみながら勉強する。やっと日本でもそれを認める傾向がありますね。ぼくが通 った日本の高校も進学校だったのであのシーンの雰囲気はよく理解できるのですが、ぼくらが育ったベイビーブーム時代の進学校ならまずカリキュラム的にも無理な勉強法と言われたでしょう。
  しかし、今や「グローバル化」とか「ゆとり学習」を文部科学省が率先して言う時代。これからはますますバラエティーある英語学習法が授業に取り込まれるようになるでしょう。

グローバル化と言えば、アメリカ人全員がグローバル人間ではないように、日本人全員がグローバル人間になるのはどだい無理な話です。何かの都合でなれない人、なりたくない人がいてもおかしくないからです。
 また、「英語さえできれば」と必死に英語だけを練習する人がいますが、それに平行して日本と世界の文化や出来事に常にアンテナを張り、知識欲旺盛でなければ学習効果 がまったく薄れてしまいます。
  今はインターネットで7、8年前では考えられなかったスピードで世界中から信頼性のあるデータが集まります。目の前にあるコンピュータは世界中につながることを考えると、それを最大限に利用しなければ、まさしく宝の持ち腐れです。

  もう少しグローバル化について話を続けます。英語ができなくても日本人としてのアイデンティティーを保ちながらグローバル人間になった人は沢山います。
  友人に、何人か芸術家がいますが、その中にフランスで学んだ彫刻家がいます。彼が最初にアメリカに来たときは片言の英語しか話せなく、いつも通 訳を伴っていました。
が、アメリカに何度か来ている内にすべて自分でできるようになりました。彼のすごさは、何も英語とフランス語が話せることではなく、大学の博物館に展示されるほどの芸術的才能にあります。自分の哲学、思想を単なる石の固まりにきざみ、その中に仏教哲学的な宇宙と静寂そして躍動を内包させ、見るものに感動を与えます。
  ですから、その友人はまさしくグローバルな日本人だとぼくは思うのです。 お金を出してただ世界中を旅行する人たちはまだグローバル人間とは呼べないでしょうね。外国をじっっくり旅行するのなら、その国の経済、文化、何でも良いからそこから何かを学びとり、現地の人たちに自分をさらけ出して互いに理解できてからこそ国際人、グローバル人間と認められるとぼくは思っています。
  要は、自分の意見をしっかり持っていて、それを外に向かって表現できる人こそグローバル人間ではないでしょうか。そういう意味から、さくらの周りの人たちは、生徒はもちろんですが、教師までまだ他人の意見に支配され本音を言えない状態ではグローバル人間にはなれないでしょう。
  番組の中で沢田先生が生徒に向かって、さくらの授業か自分のやり方が良いのか選択を迫るシーンがありました。あの場面 で、生徒たちは本当はさくらの授業の方が楽しくて良いと思っていても、主任教師の心証を悪くして内申書(school report)の評価が下がることを恐れて生徒たちは口をつぐみました。

  ぼくはカトリック系の私立高校でも3年間日本語を教えたことがありますが、まずこんなことはアメリカの高校では考えられません。大学に進学するとき、教師からの推薦書を添付するケースはありますが、普段の成績とボランティア活動、そしてSAT(Scholastic Assessment Test)という標準テストの成績で入学が決定されるので、別に教師におべっかを使う必要もないのです。
  アメリカ人ははっきりと自分の意志を口に出して言うことが多いので、教える方もこれからどのように対処すれば良いのか対応策を練ることが出来るので助かります。 とにかく、日本人がシャイなのは奥ゆかしくて良いと思われるときもあるのですが、それが続くと「中身がないからだ」と言われます。

 また、ビジネスの世界では「シャイ」は絶対に通用しません。世界中の人が他人の気持ちを重んじるようなビジネスをしているわけではないので、残念ながら「奥ゆかしい」人は取り残されるだけです。
  現在の日本全体が「シャイ」国家なものですから、どんどん世界から追い抜かれているのはさびしい限りです。
  ボストン・シンフォニー・オーケストラで指揮をされていた小沢征二さんや作曲家の坂元龍一さんのように世界的に有名になった日本人がでています。彼らのような人がこれから出てくることを祈ってやみません。


NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(3)

【前号へ】【次号へ】

【BACK】