SHIN'S ESSAYS(エッセー集)

2002年 6月11日 (火)

NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(29)

■ NHKの新番組 
あのドラマの中で起こる様々な事がらから日米の文化・習慣の違いをたくさん学ぶことができます。 そんな違いを18年間(アメリカと中米)に在住した体験を通して話していきたいと思います。

「アメリカン・プライバシー2」

昨日の終わりに番組の中から職員室のプライバシー問題を取り上げましたが、奇妙なアメリ風プライバシーがあるのでこれを今日は取り上げたいと思います。

このシリーズの第6回目の中で、雨戸の話をしました。日本に帰ってきて、「ああ、 やはり思い違いじゃない」と再確認したのはこの雨戸のことです。 たとえ強風や雨がなくても夜になればみなさん雨戸をしめますが、あれは防犯と中を のぞかれないように、という気持ちがあるからじゃないでしょうか?つまり、プライ バシーをのぞかれたくないからだと思います。

昔、わが家の2階で英語とコンピュータ教室をしていたので、よく生徒達が庭を道代 わりに横切っていました。居間をのぞかれるのをいやがって娘達ははとにかく暗くる とすぐに雨戸をしめるのがくせになって、開放的な雰囲気が好きなぼくと話があわな くてこまったものです。

こんなくせはアメリカに行っても同じで、誰かが見るわけでもないのに、月夜に2階 のカーテンまで閉めて、せっかくの月光が窓を通して見られないから開けた方がいい と主張するぼくの意見は、娘二人と妻の連合軍にいつも無視されていました。

ところが、プライバシーや安全にうるさいはずのアメリカなのに、この窓に関しては 日本とは逆で、夜でもカーテンなどせずに中を丸見えにしている家庭が多いのです。 別にじっと見るわけではなくても、通りを歩いていれば、「あ、今、XXさんが食器を 洗ってる。ご主人が皿を運んでいる」くらいの動きはわかります。

そこで、なぜカーテンを引かないのか不思議なんだが、と近所の人に尋ねました。「中 が見えた方が何かあったとき安全でしょ」と言われて、なるほどそんな考え方もある んだと少し納得。確かに家に限らず、店でも明かりを朝までつけてカーテンなどして いません。あれなら外から見られるので泥棒は仕事がしにくいことでしょう。でも、 中が見えるって言うことは侵入者にすきを与えるんじゃないかとも思うわけです。

実際、そんな無防備が大変な事件になったこんなケースがあります。

ある女性が、忍び込んだ男にレイプされたと訴えました。男は女性の家に進入し関係 を持ったことを認めたのですが、裁判では無罪となったのです。ここで質問です。窓 が開いていたために、女性が不利になった非常にめずらしいケースですが、なぜだと 思いますか?

答えは実に意外な理由でした。なんと、「窓を開けて、男を誘ったほうが悪い」という ジャッジだったのです。男の言い分は、「いつも彼女はカーテンをせず、まっぱだかに なって家の中をうろついていた。彼女は自分が見ているのを知っていたのに、それを しなかったので、自分をさそっていると思ったので入ったのだ」。 確かに、カーテンをしめなかった女性も女性ですが、男の言い分をもっともだとした 12人の陪審員達の結論にこれがアメリカの考え方なのかとぼくは唖然としてしまい ました。

陪審員の話がでたのでこれにちょっとそれます。彼からがいつもどうやって選ばれる のか日本にいるとき謎でした。ところが、自分にもそんな召集令状がきてその謎もと けました。陪審員はコンピュータがソーシャル・セキュリティー・ナンバー(国民保 健番号のようなものです)をベースにしてランダムに市民の中から選ばれていたので す。ですから、当然法律の専門家ではありません。ぼくは永住権はもっていますが、 市民権はありません。それでも、ランダムに2回も通知が来たことがあります。その つど「市民権がない私に通知が来ました」と裁判所に電話を入れるわけですが、アメ リカ人はこの強制的な陪審員制度から故意に逃れたら、罰金や禁固刑が科せられるの で、会社を休んででも出席して、勉強しなければなりません。長い裁判になると大変 です。一応日給が出ますが、微々たるものです。

話をプライバシーに戻して、少し関係していることをもう一つ。 現在、アメリカで学校の制服が見直されつつあるのを聞かれたことはありますか?テ ィーンエイジャーたちの犯罪防止に少しでも効果があるかも知れないと、全米各地で 学校の制服復活の動きがあります。ウィラメット川をはさんだスプリングフィールド という隣町で、1999年5月、サーストン高校のキンケルという15歳の生徒が両 親を射殺した後、学校に行ってクラスメート二人を銃殺、20数名近くに大けがをさ せた事件がありました。これを機会にこの街の一部の小中学校では制服の着用を義務 づけたのです。その年の米政府の調査によりますと、全米で学校に銃を持ってきた生 徒数は3900人で、その10%が小学生なのです。ですからどこにいてもどの学校 の生徒だと分かるように制服を復活しようとしているのですが、やはり自分の素性が わかる制服を着ていると犯罪が少なくなるという統計がでていました。「生徒のプライ バシーがなくなる」と騒いでいる人たちもいましたが、上のような統計を見せつけら れて批判はなくなりました。

いつか、アメリカの子どもたちが、「ほら、日本では私服で学校に行っているよ。あれ こそ自由。アメリカも真似るべきだ」と叫び始める時代がくるかも知れませんね。

追記:連日のワールド・カップ試合にうつつを抜かして、やや寝不足。しかし、日本 の活躍はすごいですね。目が離せないものですから、このメールマガジンもつい遅く なってしまいます。


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