SHIN'S ESSAYS(エッセー集)

2002年 5月 30日 (木)

NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(21)

■ NHKの新番組 
あのドラマの中で起こる様々な事がらから日米の文化・習慣の違いをたくさん学ぶことができます。 そんな違いを18年間(アメリカと中米)に在住した体験を通して話していきたいと思います。

「アメリカ人の退職年齢は?」

風邪をひいたさくらを見舞うために、婚約者のロバートがわざわざ日本までや ってきました。そこで、「おなごのために仕事を休むとは!」と沼田家の主人 が怒ります。沼田家の女性軍はロバートを優しい人と評価しますが、さて一般 的な日本人は会社をそんな理由で2週間休んだらなんというでしょうか。

もう以前、日米の休暇の違いについてお話ししたので、今回は別 の珍しいケー スをお話ししましょう。 確か92年の夏休みの頃でした。家族全員で映画撮影で有名な町で知られるオ レゴン州のアストリアというところに1週間のキャンプをはったことがありま す。エキストラとして家族全員で「ミュータント・ニンジャ・タートル3」と いう当時アメリカの子供に大人気だった映画に出ていたのです。

ぼくたちのキャンプサイトの隣に、アメリカ人の若いカップルがやってきまし た。ぼくたちは撮影のために朝4時半起きして出て、帰ってくるのは暗くなっ てからという日が続いていたので、お隣のカップルとは話す時間がなかったの ですが、あるとき早く帰ってきて話す機会に恵まれました。

ぼくたちが子供向けの映画にエキストラで出ていて面白い日本人だということ からでしょうか、すぐにそのお隣とも親しくなって、いろいろ話ができたので すが、その時、二人の口から驚くような話を伺い、「これもアメリカ人らしい 生き方なのかなあ」とつくづく感心したというか、あきれたというか、とにか くびっくりしたのです。

ご主人の口から話してもらうとこんな感じです。 「ぼくの名はトム、横にいるのは妻のアナです。ニューヨーク州から来ていま す。ええ、ここからニューヨークまではずいぶん遠いですよ。でも、1日走っ てはどこかのキャンプ地に泊まっているので、それほど遠くまで来たという印 象はありませんよ。もう1ヶ月近く旅行していますかね。なぜそんなに長い休 暇があるんですかって?ハハハ、会社をたたんできたんですよ。ええ、自分の 会社です。会社をたたんだ理由ですか?もうけすぎて忙しくなったからなんで す。いや、もうけすぎです。まあ普通 はもうけたらそれでまた頑張る人が多い かもしれませんが、ぼくたちはそれで生活までが忙しくなるのはいやだと思っ たから人に会社を売ったっていうわけです。もしお金が無くなったら、また頑 張って稼げば良いでしょう。今は金より自由を謳歌する方が楽しいと思ったか ら会社を売っただけのことです。」

二人との会話をぼくたち夫婦は一生忘れることはないでしょう。ぼくも親戚 か ら、「年収もやっと安定してきたのに、なぜ42にもなって家族を連れてアメ リカに行くの!?」とあきれられたようですが、この二人にはかないませんで した。

この出会いの後、ぶらぶらしているアメリカ人と親しくなると、今何をしてい るのか尋ねるようになりました。「45歳で金がたまったので今は趣味の世界 にいる」という答えが返ってくることがかなりあり、これまたびっくり。もち ろん趣味だけで一日中ぼけっとしているわけではないんですよ。アルバイトを していたり、別 の簡単な仕事をしている人が結構いました。大学の学生、大工、 ベンリ屋などをしていましたが、コンピュータ関連の大会社を辞めていた人が 多かったように思います。他の理由として考えられるのは、離婚している人が 多いので、大学へでも行って別 の人生をあゆんでみようという人も案外いるの かもしれません。「離婚したついでに自分のキャリアも変えたいのでね」とマ ルチメディアのぼくの授業をとっていたのは歴史をどこかの東部の大学で教え ていたという元老教授でした。アメリカって面 白いでしょ。

とくにぼくの住んでいる街は安全で勉強する環境が整っているからでしょうか、 博士号を取った人がレストランのウェイターをしていたり、ヒッピー風の生活 をしている人もいたりで、まあ簡単に言えば結構変人が集まっている街なので す。たぶんぼくも日本の基準からするとその部類にはいるのでしょうが。 (^_^)

今日の最後に、ロバートが日本風の晩酌にちょっと戸惑った風の光景から。 日本では客に酒をくんであげたり、さしつさされつという習慣がありますよね。 これは日本人の心の優しさの現れだと思うのですが、あちらでは見たことのな い習慣です。とくに西部人はビールが好きなため、バーベキューでもコップに 入れるのは面 倒とばかり缶やビンから直接飲むことが多いようです。ぼくがア メリカ人を家に接待したときわざと日本的なお酌をしてあげることがあります。 「日本ではこうやって」とコップを斜めにするやり方を教えると「なるほどこ うやればビールがこぼれにくいね」と言いますが、やっぱり一人で気楽に飲む のが良いらしくお返しはないですね。

ただ、日本のように自分が飲みきったらそのコップにまたビールなり酒なりを 入れて飲ませるのはしたことがありませんし、しないほうが良いでしょう。エ イズなどを気にする人がいるからです。

番組の中で、ロバートがきんぴらごぼうをよばれるシーンがあったと記憶して いますが、最近アメリカでも「バードック(burdock)」という名で特に自然食 品店で売られるようになりました。でも短く貧弱なのでぼくたちは買いません が、いったいアメリカ人はあれをどうやって食べるのでしょう。興味津々です。


NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(21)

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