SHIN'S ESSAYS(エッセー集)

2002年 5月 29日 (水)

NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(20)

■ NHKの新番組 
あのドラマの中で起こる様々な事がらから日米の文化・習慣の違いをたくさん学ぶことができます。 そんな違いを18年間(アメリカと中米)に在住した体験を通して話していきたいと思います。

「日本の異様な英語クラス風景」

昨日の日本の英語教室の話の続きです。

今回、さくらの英語テキスト批判から思い出した話を2つご披露します。 最初は、15年ほど前にぼくの姪におこった話です。姪は5人家族の長女で、 両親に連れられて7歳のころアメリカに2年半ほど住んだあと帰ってきました。 そのころぼくはまだ日本にいたのですが、二人の弟ときれいな英語で話してい る姪をみて、ぼくは彼女がいつか国際社会で仕事をするかもしれないとその将 来を楽しみにしていました。やがて姪は津田塾へ進み今は東京で仕事をしてい ますが、最近会ってびっくりしました。彼女はもう英語が全然話せないと言う のです。

いったい何故かと尋ねましたら、こんな体験を話してくれました。 中学生のとき、英語の先生が授業では彼女にまったく英語の教科書を読ませて くれず、周りの級友たちからも英語ができることでいじめられたらしいのです。 「みんなが順番に英語を読んで、私の番になると先生は私を飛ばして他の生徒 に読ませるの。これがずっと続いたので、だんだん英語を勉強するのがいやに なった」という姪の話を聞いて、姪はアンラッキーなところに行ったと思って いました。

ところが最近似たような話を聞いて唖然としました。友人のお嬢さんで、東 京の高校に通っているのですが、数年ぶりにあって話しをしていたら、この お嬢さんもこんな体験を語ってくれました。 「私、アメリカにいたことをクラスメートの誰にも話していないです。もしア メリカに行ってたことを話すと、かっこつけやがってとか言われるのが分かっ てるから…。英語のクラスでもわざとカタカナ英語で読むの。帰国子女で英語 ができるばっかりにいじめられる人たちを見たから」

いったいこれはどうなっているんでしょうね?このお嬢さんはぼくの近所に2 年半住んでいて、小学生の頃はむしろ日本語の方が怪しいと思えるほどネイテ ィブスピーカ並みの英語ができた子でした。 そこで、「今でもちゃんと英語が話せる?」と尋ねると「もう大部長い間しゃ べっていないからわかんない」。

この話を聞いて、英語を教える塾の先生や、他の帰国子女に会うたびにその辺 の事情を聞きましたが、みんなが異口同音に「日本で正確な英語でしゃべると クラスや先生にいやがられるようだ」と聞いて本当に、本当にびっくりしてし まいました。

ぼくもずいぶん古い帰国組の一人ですが、たまたま帰った先が九州の田舎で、 話せる言葉がスペイン語だったからいじめられなかったのかもしれません。い や、いじめというより「妬まれなかった」のでしょう。たぶん、帰国子女や英 語が好きで発音の良い生徒達はクラスの「妬み」の対象になるのだと思います。 「同じ英語を勉強している自分たちはこんなに苦労しているのに…」と思われ るのかもしれません。しかし、海外から帰国してくる子どもたちはそれぞれの 国で日本のとは違った質のいじめにもあっているのです。それを知ったら少し は帰国子女に同情してくれて風当たりも変わるかもしれませんね。いつかこの 話ができればと思います。

この「妬み」で話を変えますが、アメリカでは珍しいほどこれがないですね。 一芸に秀でる人を英雄視しますし、りっぱな奴と尊敬する傾向があります。他 の国は知りませんが、人種が入り交じったアメリカのような国では、できる人 間に対する嫉妬よりも畏敬の念が先に来るのかもしれません。

いずれにしても、帰国子女が多くなった今の日本です。両方の文化を知ってい るこの子たちから吸収できることがいっぱいあるはずなのに、それを日本から 出たことのない子どもたちに気づかせない大人に問題があると思います。ぼく はこの問題を早急に改善しなければ、我々日本人のためにならないと考えてい ます。

さて、番組の中でさくらが風邪をひいたことから日米の面白い逆現象を思い 出しました。

日本では熱があると暖かくして汗をすっかり出す治療法をとります。アメリカではこれが逆なんです。つまり病人を水風呂につけるんですね。まあ両国とも 長い歴史の中で知恵を出し合った治療法なのかもしれませんが、アメリカらし いと思われる治療法だとぼくは思っています。というのは、いわゆる対症療法 をとるからです。これは悪い箇所があればすぐに切開して除去するという西洋 医学の常套手段です。病気の不快な症状を和らげる治療法ですから、「高い熱 があればそれを下げるには身体を冷たくする」という切って言い捨てれば「単 純な発想」です。 しかし、東洋医学はその逆の発想で、自然治癒力を高める療法をとります。身 体から汗を出しきって熱を下げるという考え方は、まるでクーラーの原理を思 い出させますが、非常に間接的な治療法で、賢い方法ではないでしょうか。

この東洋医学と西洋医学の考え方の違いは、東洋人と西洋人の考え方の違いに もそのまま現れていて非常に興味わく部分ですよね。 病気のことから、痛みに弱いアメリカ人を思い出しました。彼らはぼくら日本 人からすると実にオーバーです。喜びも、悲しみも、そして痛みにもオーバー な表現をします。痛いのに我慢をしすぎて医者の判断を狂わせる日本人にも困 りものですが、バンドエイドくらいですむ指の怪我をとてつもないオーバーな リアクションのせいでギブスをはめさせられ、杖をついてよたよた歩いている アメリカ人を見ると、同情を越えて笑ってしまいます。

いやはや、同じような怪我でもお国違えばこれほど結果も変わるものなんです ね。


NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(20)

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