SHIN'S ESSAYS(エッセー集)
2002年 5月 17日 (水)
NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(13)
■ NHKの新番組
あのドラマの中で起こる様々な事がらから日米の文化・習慣の違いをたくさん学ぶことができます。 そんな違いを18年間(アメリカと中米)に在住した体験を通して話していきたいと思います。
「アメリカン・プライバシー」
さくらが日本の高校で英語の副担任になって1ヶ月以上たとうとしています。 そのさくらですが、ずいぶんおせっかいなシチュエーションになってきました ね。他人の離婚騒動に口出しするとは。
これも番組を面白くするためという意図からでしょうが、アメリカでもこんな プレイべートなことには口出ししないでしょう。親しい友人ならアドバイス 程度はしますが、ホームステイ先のまだ親しくない誰かさんのことまでは考え られないことですね。
とにかくプライバシーに関してはうるさいお国柄です。日本のようにちょっと めかして玄関を出たら、近所の人から「あらまあ、おでかけですか?どちらま で?まあいつまでいらっしゃるの?」と実に細かく尋ねる人がいますが、ぼく の近所ではせいぜい、「Hi!」で終わりでしょうか。
ただし、芸能人は別ですよ。日本同様週刊誌やバラエティー番組で、有名な俳 優のスキャンダルをとりあげて読者・視聴者をかせぐのはどこの国でも同じで す。
スキャンダルといえば、世紀のスキャンダルはやはり前大統領のクリントン氏。 もういいかげんにやめてと、国民から非難されるほどマスコミはこの問題にど っぷりつかり長い間これで視聴率をかせぎました。大統領からすれば非常にラ ッキーなことに大統領の座を最後まで暖めましたが、さあ日本ならどうなるで しょうか。
ぼくはアメリカ人の大統領に対する目よりも、彼の不倫相手だったモニカ・レ ウィンスキーさん本人の行動と彼女を見るアメリカ人の目の方に興味を持ちま した。モニカさんは慰謝料をがっぽりもらい、暴露本をだし、テレビコマーシ ャルにでて一躍有名人。せいぜい眉をひそめたのは中年以上の人たちでしたし、 彼女を被害者という目で見る人が多かったことも以外でした。しかし、それ以 上に、殺人ではない者たちを英雄視するアメリカ人の態度は、日本人のぼくに はいまだに理解しがたいものがあります。
「おやおや!?」と一般の日本人では考えられないような、ぼくの興味をひい た2000年8月のある事件についてお話ししましょう。
話の主人公はインターネットで株価操作して大儲けをした少年です。 「pump and dump scheme」と呼ばれる電子メールを使った非常にシンプルな 手口で株価操作をした犯人をとらえると、まだ15歳の少年でした。そのころ アメリカはIT景気が沸騰していて、極端なハイテク労働者不足で米政府それ に教育関係者たちは子どもたちの理数系離れに頭を悩ましていました。そんな おり、まったく皮肉としか言いようがないのですが、犯人を捕まえてみれば米 証券取引委員会(SEC)開設来の未成年者犯罪記録になるほど若い犯人だっ たというわけです。
未成年者は口座を持てないので、犯人は父親名義の口座を利用したのです。自 室にこもってガリ勉、なんてことはしません。複数の偽名を使って600通に およぶ電子メールをばらまいたり、チャットルームで偽情報を流していたので した。1株2ドル程度の株が何十倍にもなるような噂に釣られた大人たちが買 いあさり始めて20%以上の値になると売る。この繰り返しで半年間におよそ 25万ドル(3300万円)近くを荒稼ぎしていたのです。実は、この荒稼ぎ はまだほんの一部で、少年が株価売買した27件中11件しかSECは取り 上げていません。
アメリカではもし犯人が罪をある時点で認めたり、共犯者のことを話せば罪が 軽くなるという一種の取引制度があります。少年はこんな恩恵を受けたようで す。少年から罰金を徴収する以上の時間と捜査費用がかかるので捜査官たちに とっても経費の軽減になるということなのでしょう。
ぼくが問題にしたいのはここからです。日本なら「せっかくの才能をドブに捨 てるなんて‥‥‥」と普通だれもがネガティブな反応をするでしょう。しかし、 少年が住む町の住民やクラスメート、そして親までが「すごいやつ」と英雄扱 いしていることが米タイム誌の10月2日号に出て、ぼくは「オイ、オイ、どこか違うんじゃないか…」と開いた口がふさがりませんでした。
番組の中で、さくらが沼田家に帰ってきている娘の離婚問題解決のために名古 屋に出た後、知っているのに知らんぷりを決め込もうとした母親が次女から口 止め料を請求されるシーンがありました。
口止め料ではありませんが、このシーンから日本人旅行者にとっては頭の痛い 「チップ問題」を思い出してしまいました。
日本のレストランに入ってほっとするのはこのチップの心配がないこと。アメ リカではいつもウェイター、ウェイトレスのサービス度によって、どのくらい チップを置こうかと考えなければならないのです。特にアメリカに住みはじめ た頃はこんなことを気にしながら食べるので、食事の味も100%楽しめなか ったような気がします。
食べた料金の10%くらいで良いと思っていたのですが、近年は15%が相場 になり、それを計算するのも面倒です。ただ、アメリカのウェイター、ウェイ トレスの時間給は日本のそれとほぼ変わりなく、日本とは逆に物価が高くなっ たのでみんな楽ではありません。しかし、みんなはチップがあるおかげでニコ ニコ仕事ができているのですね。
前回、ロスで教師をしていた友人のことを書きましたが、彼の奥さんがタイ人 でロスのハリウッドで和食レストランのウェイターをしていたそうです。彼女 によると、チップの方がずっと給料よりも高く、その額を聞いたときぼくが高 校で日本語教師をしていたころの給料の倍以上もあってびっくりしました。
ですから、「チップ」制度のないアジア圏からきた外国人はよくチップを置いて いくのを忘れるか、額が少ないなどで嫌われることがあります。
他の州は知りませんが、オレゴンではそのチップ収入に税金がかけられます。 チップをもらわなくてもどれほどのチップ収入があるだろうから、と給与以外 の収入は税金として自動的に25%持って行かれるので、チップを出さなかっ た客はウェイター、ウェイトレスの給料をそれだけ減らすことになるのです。 アメリカ人は日本でもチップ制度はあると思いこんでいますから、 「日本人はケチ」だという大変な誤解をここで生むことになります。
番組の中で、さくらが布袋さんの置物を買うとき、売っている人に何か英語で 尋ねていましたね。皆さんは日本人の顔をしている人が、日本語ができるのに 会話の中に英語を入れるとキザでいやな奴だと思いますか?
日本に何度か帰ってきたとき、「長年アメリカに住んでおられるのに、英 語が会話に入ってきませんね。ごりっぱですよ。いやあ、帰国した人の中には 英語を会話によく入れられる人がいてきざっぽく感じるものですよ」 とある人から変な誉め方をされたことがありました。
外国に何年間か住むとちょっとした言葉はどうしてもその国の言葉に変わって しまうようです。とくに、人混みの中で肩と肩がぶつかったときなど「Sorry!」 とか「Oops(ウーップス)おっと」とつい英語が口についてでます。ましてや 4世のさくらの場合は当然でしょうが、これはだれにでもある現象で、べつに 気取っているわけではないのです。もしそんな人に会ったら寛大な気持ちで見 てあげて下さい。
NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(13)