SHIN'S ESSAYS(エッセー集)

2002年 5月 15日 (火)

NHK「さくら」の中の異文化コミュニケーション(11)

■ NHKの新番組 
あのドラマの中で起こる様々な事がらから日米の文化・習慣の違いをたくさん学ぶことができます。 そんな違いを18年間(アメリカと中米)に在住した体験を通して話していきたいと思います。

「食事マナーや離婚問題について」

日本のテレビ番組で日本的だなあ、といつも思うのは食事のシーンがとても多 いことです。日本の家庭でみんなが揃うのは朝食か夕食時でしょうから、当然 のことなのでしょう。アメリカではお父さんが家に早く帰ってくることが多い ので子供と一緒にスポーツなどしているというシーンが必然的に多くなってき ます。逆に普段の食事は質素なのでなんとなく迫力にかけるような気がします。 その代わりローソクやテーブルクロス、それに花などで食卓を豪華に見せます。 その辺の飾り付けは本当に上手ですね。

もう一つ食事シーンで感じる違いは、日本の食事シーンではまだまだ会話が少 ないことでしょうか。昔は「食事中に話すのは悪い」という習慣があったので、 黙って黙々と食べる家庭が多かったと思います。この習慣はぼくにも身に染み ついているので、やはりアメリカで食事に招かれると皆より早く皿の中が空に なりがち。気を遣いながら食べることがあります。

食事といえば、アメリカとイギリスの食事のマナーの違いをご存じですか?フ ォークとナイフの使い方の違いです。ぼくたち日本人はアメリカ以外の西欧の 使い方を習ったようで、右手にナイフ、左手にフォーク、ですよね。ところが アメリカでは例えば肉を切るときは確かにその格好で切りますが、その後は必 ずナイフをテーブルに置き、右手にフォークを持ち替えて、左手は膝の上に置 いて食べます。正式な晩餐に招かれるたびにそれを確認したのですが、みんな 同じでした。そして、ヨーロッパからのお客さんたちはみんな日本人がやって いる右手にナイフ、左手にフォークのテーブルマナーでした。ぼくは持ち帰る のが面 倒くさいのでいつも日本・ヨーロッパ式を通しています。一番大事なこ とはそんなことを気にしないで、出された食事を楽しむことではないでしょう か。

食事の話をもう少し続けます。日本語の「いただきます」という言葉。実に美 しいですよね。これから食べるものを作ってくれた人たち全員に、そして自然 の恵みに感謝をこめたこの言葉はアメリカにはありません。熱心なキリスト教 信者の家庭であれば食事前に「神様、今日私たちは友達をこの夕食に招いて…」 とその場に適した短い祈りを作って祈ることがあります。カトリックなら「天 にまします我らの父よ…」などのような長い定型の祈りを唱えて食事が始まり ます。それぞれやりかたは違っても感謝の気持ちを表しながら食事を始めるけ じめの言葉です。

しかし、最近のアメリカでは一応キリスト教に帰依していても宗教心が薄れた という人が多くなったので、食事前の祈りなどなくて、みんなそろったらスッ と食事がスタートすることがよくあります。ぼくはなんとなく気まずく感じる ので、必ず「いただきます」と手を合わせて日本語で言うようにしています。 「それはどういう意味?」 と聞いてこられるとその説明をしますが、みんな「いい習慣ですねえ」と言っ て中にはしっかり日本語で覚えてくれる人もいます。

さて、沼田家の長女のみどりです。そのご主人が名古屋から夜遅くやってきて、 頭を下げて、沼田家に妻をしばらく泊めて欲しいと言います。ぼくは夫婦関係 は日本的なものが良いと思っていますが、アメリカ人はいつでも「I love you.」 と言ってお互いの愛を確かめないと不安という気持ちがあるものですから、も しご主人が言わなければ離婚にまで発展するケースもあります。

夫婦にはお互いに言わなくても分かる部分というものがあると信じますが、た だ日本の場合はそれが極端で、「おい、飯、風呂」だけの会話では、奥さんがか わいそうでしょう。こんな会話はまずアメリカでは成立しません。ただ、アメ リカといっても中南米やメキシコなど、ラテン系はまた別のようです。

スペイン語で「男子、雄」をmacho(マーチョ)というのですが、英語でそれ を借用して男らしい男をややジョーク的に「macho man」と言うことがありま す。ラテン系のテレビ番組を見ていると次から次ぎに男の浮気話がでてきて、 参ってしまいます。まあ一言で言えば、本当に女好きですね、ラテン系は。こ れだけでも一冊の本が書けるほどおかしな話がありますが、ここではやめてお きましょう。

とろこで、ぼくたちはアメリカというとどうしても北米の合衆国をイメージし ます。しかし、アメリカは北米、南米そして中南米があり、厳密に言うとメキ シコもカナダもブラジルもアルゼンチンもアメリカです。小学生の時、ドミニ カ人の級友から厳しく「ミゲル(ぼくの昔の洗礼名)はアメリカ、アメリカっ ていうけど、ここだってアメリカだよ!」と抗議されて、合衆国以外のアメリ カ人と話をするときにはちょっと気にしながら「アメリカ」という言葉を使う ようになりました。

また、番組に戻ります。 「夫婦がうまくやっていく秘訣は女房の我慢」 とさくらのおばあちゃんが電話口で言います。こんな話を数年前、夏目漱石の お孫さんで、オレゴン大学名誉教授のマクレイン松岡陽子先生とお話ししたこ とがあります。先生はアメリカ在住51年という方ですから、ぼくが離婚問題 と日本男性についてご意見を伺ったとき、 「女は我慢などせずそんな男とはすぐに別れれば良いのよ」 と一刀両断でした。ぼくはまだ13年くらいしか住んでいないせいか、まだま だ夫婦関係や離婚問題に関しては先生と比べると保守的なようです。でも、先 生のような意見がアメリカの大半の見解だと思います。しかし、確かに離婚率 の高い国ですが、再婚率も高く、異母、異父兄弟姉妹がうじゃうじゃいる印象 があります。

前にも言いましたし、しつこいようですが、日本的な以心伝心は外国では通 用 しません。外国人と結婚しようと思っている人はそのあたりの違いをしっかり 話し合ってから式をあげることにしましょう。


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